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ファイナル・パス [航空関係]

GCA に対するコメントの中で、ファイナル・パスに関するご質問がありましたので、もう少し詳しく説明させていただきます。

ご質問の趣旨は、
着陸のときの降下のパスは、パイロットの「勘」 によって維持されるものなのか?
ILS も PAPI も無いという空港の場合には、目視での感覚となるのか?

通常、PAPI を参考にはしますが、PAPI の変化を追ってしまいますと、下の図のような不安定なファイナル・アプローチとなってしまうでしょう。
blogvisualpathbad.jpg
では、どうするのか?
おっしゃる通り、目視での感覚で3度のパスをキープするのです。そのためには、正しいパスの時の滑走路の見え具合を頭にたたき込んでおく必要があります。
blogfinalpath.jpg
真ん中の適切なパスの時の滑走路の見え具合が、パイロットの感覚の中にしっかりと刻み込まれているのです。そして、
適切な見え具合を保ちながら、★の AIming Point へ向け、自分自身を一直線に持って行くよう操縦するのです。★が上方や下方へずれて行かないようにする訳ですね。

そして、その AIming Point を、滑走路末端からどれだけ前方に取るのかが重要になってきます。
下の図のように、B4においては、パイロットの目の位置と、主車輪の位置が大きく離れていますので、AIming Point をあまり手前に取りすぎますと、主車輪が滑走路末端を通過する時の高さが減少してしまいます。
この高さを最低でも50フィートは取りたいので、B4の AIming Point は滑走路末端から2千フィート先に取るのが理想的だと言えます。
blogvisualpath.jpg
コーパイに、「エイミング・ポイントは何フィートに取ってるの?」 と聞きますと、必ず「千5百フィートです」 と答えるんですよね。
AIming Point を千5百フィートに取ってしまいますと、滑走路末端での主車輪の高さは、3度のパスの時は47フィート、2.5度(小松)の時は33フィートとなってしまいます。

それに、滑走路に近づき、ILS からビジュアル・フライトに移行した時、千5百フィートの AIming Point へ向かおうとしますと、機首をグッと押さえ込むような無理な操縦を強いられる事にもなります。
その事により、降下率が増えて飛行機に勢いがついてしまい、接地点が延びる結果となる場合が多いのです。
では、AIming Point 2000f とは具体的に滑走路のどの位置にあたるのでしょうか?
下の図の接地帯標識の位置になるのですが、ICAO 基準に準拠して、順次新しいマーキング(図の上)に変更されて行く予定になっています。
blogtouchdownpoint.jpg
規程では、飛行機を滑走路末端から1000ft ~2250ft の間に接地させるよう、強くリコメンドしています。
上記の数値は-400に適用されますが、この数値は機種によって異なります。

その滑走路の見え具合ですが、注意すべき点も。
滑走路は平坦で完全に水平になっているのだろう。と思われている方も多いでしょうが、滑走路って結構 波打っていますし、傾斜も付いているんですよ。例えば鹿児島空港、
滑走路は南から北に向けてアップ・スロープになっていますので、適正なパスに乗っていても、見え方が違って来る事になります。滑走路の南端と北端では標高が47フィートも違っているのです。
blogkagoshimarwyslope.jpg

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yasu

後半に解説やデータをお書きになっていますが、
「パイロットの感覚の中にしっかりと刻み込まれている」
このフレーズに集約されていますね。
これぞプロの発言です。流石です。

by yasu (2009-09-18 18:01) 

SpeedBird

こんばんは。記事を拝見して、いつも思っていたのは航空関係は国際標準
単位(SI単位系)を使わなくていいの?---計量法を調べて見たところ、航空
機と武器はヤードポンド法を使っても良い例外になってますね。尺貫法は取
引に使ってもいけないし、計量器も販売してはならぬ、但し、尺相当の目盛
にメートル法単位による数値を付した、いわゆる尺相当目盛付き長さ計に
ついては、販売してもよろしい、等々---法律もなかなか面白いです。

by SpeedBird (2009-09-18 22:26) 

kingair350

パイロットたちってエアラインパイロットになるために小型の単発プロペラ機で飛行訓練を始める頃から着陸についても何度も滑走路の正しい見え方などはもう体に染み付いているというか、着陸進入時も計器を見て降下率などを図るよりも早い段階から滑走路が見えたほうがパイロットにとっては、はるかに操縦がしやすくて精確に降りていく事ができるといいますからね。

実際国内線のパイロットさんたちって悪天候じゃないときで着陸進入時に
早い段階から滑走路が視認できたときは自動操縦を使ってILSで降りていくよりも自動操縦を解除してマニュアルで降りていく方が楽じゃないですか? でもどうなんでしょうかね。。以前の記事でも自動操縦の使用を強く推奨すると書かれていましたので、、最終進入から接地までくらいしか自動操縦を解除しないのでしょうか。。。

by kingair350 (2009-09-19 03:04) 

トメ

FDさんこんにちは。
ご丁寧に説明いただきましてありがとうございます。
すご~く良くわかりました。
また、パイロットさんの操縦技術に敬服いたします。
あれだけの巨体を、250km超のスピードで、推力、抗力、揚力、重力のバランスを取りながら、風や地理的条件を加味しつつ、ピタリと着陸させるなんて!やっぱり「すごい」ですね!

このブログで、長年の疑問が少しずつ解決していきます。ずいぶんたくさんの勉強をさせてもらいました。ありがとうございます。
でも、好奇心をむき出しにしてしまって申し訳ありません。
今後も、面白い記事を楽しみにしています!
by トメ (2009-09-19 17:23) 

NO NAME

はじめまして。
いつも楽しく、また興味深く読ませていただいております。
以前はよく、御社のB747で函館や松山へ飛んでいたのですが
いつも疑問に思っていて、お聞きしたいことがあります。

両空港ともにビジュアルアプローチの実施機会が多い空港
かと存じますが、ビジュアルアプローチの場合も目視による
感覚で場周経路、或いは最終進入経路上へと会合させて
いくのでしょうか。
或いは目安の地点に目安の高度及び速度というような何かしらの
目標点を設け、そこへ持っていくのでしょうか。
それに伴い、どんなタイミングでフラップやギアを整えているのか
とても不思議に思っていました。

また、両空港共に自分が降りていこうとする方向とは逆、つまり
正面衝突する方向へ出発機が離陸しているのを機窓から見たことが
あるのですが、風向風速が不定の場合は滑走路を自由に選択して
いるのでしょうか?微妙な風の場合等はどういった根拠あるいは
考えで「この滑走路を使うぞ!」と判断されるのでしょうか。

長く、かつとりとめのない質問文で大変失礼ですが、お時間の許す限り
で教えていただけたら非常に幸いです。
by NO NAME (2009-09-21 10:55) 

FD

航空法の表記は全てメートル法になっております。

松山空港では風が弱い時(追い風成分5ノット以下)、着陸には14、離陸には32を使うようになっています。なるべく海の上を飛んで、騒音を減らすためです。
もちろん安全優先ですので、トラフィックが混んでいる時など、逆方向の運用は行われませんし、追い風での着陸や離陸をパイロットが断る事も出来ます。

その他、広島空港から羽田へ向かう場合、西向きに離陸するより東向きに離陸した方が経路が短縮されますので、西風で28が使われている場合でも、10をリクエストしたりします。

ビジュアル・アプローチは空港によってやり方が違ってくるでしょうが、私の場合は、例えば滑走路の10マイル手前で3千フィートになるよう、降下のタイミングを図ります。
10マイル手前にウェイ・ポイントを作って、高度3千フィート・速度180ノットと入力し、降下開始からウェイ・ポイントまでアイドル・ディセントを行えるようにする訳です。
ビジュアル・アプローチを行うのは、飛行経路・時間を短縮して燃料を節減をするのが一番の目的ですので、途中でパワーの調整をしていたのでは話になりません。
これは結構難しい事なのですが、やはりその努力をしなくては、と思っております。
by FD (2009-09-25 09:25) 

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