So-net無料ブログ作成

なめんなよ!その弐 [航空関係]

今日、新たに設定されたシミュレータ訓練を受けてきたのですが、その訓練の目的とは何ぞや?
ハイ、63歳になっても乗務を続ける、往生際の悪い老いぼれ乗員のために設定された、追加の訓練だったのです。
この訓練、航空局から特別に要求されていると言う訳ではなく、航空会社の判断で設定した訓練らしいのですが、年寄は技倆的に劣ると言う先入観だけで設定された訓練ではないのか?年寄りだからと言って、なめんなよ!
年齢による技倆の差より、個人の資質による技倆の差の方が大きいんだよ!

訓練そのものは有意義な訓練でしたので、年寄りだけではなく、若い人にも受けて欲しい訓練でしたよ。
普段の訓練では行われていない、エマージェンシー・ディセントや2エンジン・フェイルの科目がありましたからね。

特に、2エンジン・フェイルは、そのプロセジャーが変更になったばかりですので、若い人にもぜひ経験して欲しい科目でした。
エンジン2基が同時に故障するなど、まず考えられないのですが、新しいプロセジャーに慣れておく必要はあるでしょう。

これまでは、2基のエンジンが停止した場合、車輪を降ろしてしいますと、ゴー・アラウンドは不可能と言う事で、車輪を降ろすタイミングを通常より遅らせるプロセジャーになっていました。
しかし、こんな緊急事態の時、管制機関からゴー・アラウンドの指示を出すなどあり得ないとの前提の下、車輪は通常と同じタイミングで降ろし、早めに安定したアプローチに移れるよう、プロセジャーが変更されたのです。
ゴー・アラウンドが不可能な理由は、エンジン・パワーが足りないからではなく、左右のエンジン・パワーの不均衡による、VMCA との関わりのよるものなので、左右のエンジンが1基ずつ不作動になったような場合には、まったく問題にはなりません。
片側のエンジンが2基不作動になった場合でも、実際はゴー・アラウンド可能なのですが。そのかわり、慎重なパワー操作が必要になる事は言うまでもありません。

片側のエンジンが2基不作動になった時の VMCA は162ノットです。これ以下の速度ですと、ゴー・アラウンドのためにフル・パワーにした時、ラダーをストッパーまでフルに踏み込んでも、機首の偏向を止める事が出来ないと言う事になります。速度が遅いとラダーの効きが悪くなりますからね。
この時の着陸速度は重量によっても変わってきますが、概ね150~155ノットとなりますので、VMCA より小さい事になり、ゴー・アラウンドを行う場合は注意が必要なのです。
なお、どちらか一方の外側エンジンが1基のみ不作動になった時の VMCA は120ノットになります。

それともう一つ、オート・パイロットを接地寸前まで使う事が強く奨励されるようになりました。
オート・ランドを行わない場合、「オート・パイロットは200フィートまでに外さなければならない規程になっているのでは?」 と異議を唱える人もいるようですが、運用限界をよく読んでみると、このように記載されています。

ILS Glide Slope および Localizer をキャプチャーしているか、Go-Around モードにある場合以外は、MCA-50フィート・・・・・
ILS アプローチを行っていますので、この規程は該当しません。

Single Channel での ILS アプローチでは、滑走路高 100フィート 未満に降下する前に・・・・・
2エンジン・フェイルの場合、LAND2 となり、Single Channel ではありませんおで、これも該当しません。

2エンジン・フェイルの時、オート・パイロットは【LAND2】 にグレード・ダウンしますが、オート・ランドは可能ですので、約50フィート RA でのフレアー・マニューバーは行ってくれます。これを上手く利用すればいいのです。

50フィートでパワーを絞り始め、(エンジンが2基停止している場合は、オート・スロットルは不作動となります)30フィートでパワー・アイドルとし、10フィートでオート・パイロットを外しますが、前述したようにフレアー・マニューバーが行われていますので、その時のピッチを維持するだけで、スムースに着陸できました。下手に引き起こし操作を行いますと、バルーニングしてしまうようです。

新しいプロセジャーでは、ラダー・トリムをゼロにする事と、パワー・アイドルにした後、オート・パイロットを外すのがコツのようでした。

nice!(5)  コメント(7)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 5

コメント 7

トメ

FDさん、こんにちは。

訓練お疲れ様です。
パイロットの皆さんは本当にたくさんの訓練や試験をされてこられるんですね!感心いたします。
空の安全運航。感謝しております。

私は、熟練パイロットさんの方が、若い人よりも“上手い”と信じています。
「格好」を求める若さより、「慎重」を求める熟練の方がどれだけ安全か!
飛んだ数だけ、操縦桿を握った数だけ、恐さの数だけスキルも安全も増えていると思っています。
鍛えている、勉強している60代はまだまだ衰えていませんよ!私もきれいに歳をとって行きたいです。(間もなく不惑)
by トメ (2009-09-07 18:50) 

まるまる

ごもっともなご意見です。年齢だけで劣るという判断、その他数々の固定観念がどんどん増える現代に強い不安を感じています。
これからも益々のご活躍をお祈りいたします。
人は向上し続ける限り、現役だと思ってますが、若くとも向上しなければ止まってしまう・・・自分も肝に銘じて頑張らなくちゃ!
by まるまる (2009-09-07 19:06) 

NO NAME

以前、とある管制官の方に聞いた話ですが、QFの-400で2エンジンフェイルでKIXへ緊急着陸要請が来たことがあったそうです。
結局、高度が下がってきたところで再始動に成功して、緊急着陸は取り消して普通に着陸したそうですが。
by NO NAME (2009-09-07 20:31) 

トメ

FDさんこんにちは。

質問です。

オートスロットル不作動時のオートパイロットとは?
降下姿勢の維持や降下のパスは手動ということになるのでしょうか?
FMSがやりたい事を想像しながらスロットルを調整するのですかね…

すごいですね、何か不具合があっても自動機能が働いているなんて!

すいません、「何で何で小僧」になってしまいました。
by トメ (2009-09-08 10:33) 

FD

例えばILSアプローチを行っているとします。
通常ですと、降下パスの維持はオート・パイロットが、スピードの調整はオート・スロットルが受け持つ事になっていますが、オート・スロットルが不作動ですので、スピードの調整はパイロットが手動で行う必要があります。
その場合でも、パスの維持はオート・パイロットが行ってくれますが、パワーが足りないと、スピードがどんどん減っていく事になります。

在来型のB4では、オート・パイロットを使用している時でも、スロットルはパイロットが手動で調整していました。オート・スロットルの性能が劣っていたんですね。
by FD (2009-09-08 10:56) 

トメ

ご回答いただきありがとうございました。
胸のつかえが取れました。

記事にあるVNAVの各モードのお話を読んでいると、航空機に使用される自動化システムのすばらしさに感心していたのですが、オートスロットルを切り離しても動作できる“自由度”もあるんですね。

ありがとうございました。
by トメ (2009-09-08 17:33) 

FD

オート・パイロットとオート・スロットルを併用する事により、最高のパフォーマンスを発揮するように設計されていますが、単独で使っても何の問題もありません。

ILSアプローチで着陸する場合、先にオート・スロットルを外し、しばらくしてからオート・パイロットを外す人と、私のようにオート・パイロットから先に外す人がいます。オート・スロットルを先に外す方が多数派ですが。

私がオート・パイロットを先に外す理由は、以前ホーム・ページには書いていたのですが、また追々と。
by FD (2009-09-08 22:17) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0